確定申告をしないまま放置してしまうと、想定外の損失やペナルティを受ける可能性があります。控除が受けられず税金を余計に払うことになったり、延滞税や加算税といった重いペナルティが課されたりするケースもあることから、放置はすべきではありません。
また、無申告はマイナンバー制度や支払調書によって高確率で税務署に把握される仕組みが整っており、「バレないから大丈夫」という考えは非常に危険です。
そこで本記事では、確定申告をしなかった場合に起こるリスクや罰則、発覚するまでの流れ、そして無申告が見つかったときの正しい対処法について詳しく解説します。日頃からの管理で未然に防ぐ方法も紹介しますので、確定申告が不安な方はぜひ参考にしてください。
確定申告をしないと控除が受けられず損をする可能性がある
確定申告を怠ると、本来なら受けられる優遇や還付が適用されず、結果的に「払わなくてよいはずの税金」を多く負担してしまうリスクがあります。そこに申告遅延に対するペナルティまで加わってしまうと、当初の納税額より総支払額が膨らむリスクも無視できません。
具体的には、次のようなリスクがあります。
それぞれ順に解説いたします。
申告をしないと延滞税や加算税・重加算税などのペナルティを受ける
確定申告を行わずに放置してしまうと、まず課されるのが延滞税です。
延滞税は本来の納期限からの遅れに応じて日割りで加算され、放置期間が長ければ長いほど負担が大きくなります。また、期限内に申告をしていない場合は「無申告加算税」が課され、意図的に収入を隠していたと判断されれば「重加算税」が課されることもあります。
具体的な税率は以下のとおりです。
| 税目 | 区分(納付すべき税額の階層) | 原則税率 | 更正等の通知後に申告した場合 | 調査の通知前に自主申告した場合 | 
|---|---|---|---|---|
| 無申告加算税 | 50万円以下 | 15% | 10% | 5% | 
| 50万円超〜300万円以下 | 20% | 15% | 5% | |
| 300万円超 | 30% | 25% | 5% | 
| 適用場面 | 原則税率 | 5年以内に同じ税目に対して無申 告加算税又は重加算税を課された場合  | 
|---|---|---|
| 過少申告に代えて課される重加算税 | 35% | 45% | 
| 無申告に代えて課される重加算税 | 40% | 50% | 
これらの税金は「ペナルティ」としての性格が強いため、通常の納税額に上乗せされることから、支払総額が膨らんでしまいます。申告を怠ったことによるリスクは非常に大きく、最終的には本来の納税額以上の負担を強いられることになるのです。
青色申告やふるさと納税などの控除が無効になる
確定申告をしない場合、本来受けられるはずの各種控除が無効になってしまいます。
たとえば、青色申告をしていれば最大65万円の特別控除を利用できますが、無申告の状態ではその権利を失い、節税効果が一切得られません。また、ふるさと納税や医療費控除、生命保険料控除なども、確定申告を行わなければ適用されません。
このように、控除が受けられないということは、結果的に本来より多くの税金を納めることにつながります。せっかくの制度を利用できずに損をするのは、無申告がもたらす大きなデメリットといえるでしょう。
税金の還付を受けられず損をする可能性がある
確定申告には、納めすぎた税金を取り戻せる「還付申告」の役割もあります。
確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
引用:国税庁「還付申告」
たとえば、給与から源泉徴収されている所得税が実際の納税額より多かった場合、医療費・住宅ローン控除などの適用により税額が減る場合などには、本来なら払いすぎた税額が戻ってくる仕組みです。
しかし、申告を行わなければこれらの還付は一切受けられず、結果として余分に支払った税金をそのまま損することに。無申告は単にペナルティを受けるリスクだけでなく、「本来戻ってくるはずのお金を失う」という二重の不利益を招くことになるのです。
確定申告をしてない人がバレる理由
「申告しなければ見つからないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし実際には、税務署はさまざまな情報をもとに個人の収入を把握しており、無申告は高い確率で明らかになってしまいます。
収入の記録はマイナンバーや支払調書を通じて管理され、副業やアルバイト収入も企業や取引先から報告される仕組みが整っています。少しでも不自然な点があれば税務調査による確認も行われるため、「申告しなければ大丈夫」という考えは通用しません。
具体的には以下のような仕組みで無申告は把握されます。
それぞれ順に解説いたします。
マイナンバーや支払調書などで自動的に収入が確認される
現在の税務システムでは、マイナンバー制度によって個人の収入が一元的に管理されています。企業や金融機関、証券会社などは、給与や報酬、利子、配当といった支払内容を「支払調書」として税務署に提出する義務が課されているのです。これにより、納税者が申告をしていなくても、税務署側では「どのくらいの収入があったか」を自動的に把握することができてしまいます。
給与の支払者が税務署に提出する平成28年1月1日以後の支払に係る給与所得の源泉徴収票には、受給者のマイナンバーまたは法人番号を記載する必要があります。
引用:国税庁「「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」
そのため、無申告を続けても「収入が存在するのに申告がない」という事実はすぐに露見します。マイナンバーと支払調書の整備により、申告をしないまま逃げ切ることはほぼ不可能といっても過言ではありません。
副業やアルバイト収入は企業や取引先から税務署に報告される
会社員の給与だけでなく、副業やアルバイトによる収入も、支払う企業や取引先が税務署に報告する仕組みになっています。
具体的には、給与を支払った企業は「給与支払報告書」を市区町村へ提出、業務委託報酬などを支払った場合は「報酬・料金等の支払調書」を税務署へ提出します。これにより、受け取った本人が確定申告をしなくても、税務署側はその収入の存在を把握することが可能です。
そのため、「副業だから申告しなくてもバレない」というのは誤解です。むしろ副業やアルバイト収入は、複数の報告制度を通じて税務署に逐一記録されているため、申告しないとすぐに不一致が見つかってしまうでしょう。
税務調査やデータの照合により無申告は高確率でバレる
税務署は申告書だけでなく外部から収集した法定調書やマイナンバー情報などを使って、申告内容との照合を行っています。企業や支払者が提出する「法定調書」は税務署が年次で受け取るデータの代表例で、これらと納税者の申告内容を突き合わせることで、申告漏れや無申告が発見される仕組みです。
法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」および「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署への提出が義務づけられている資料をいいます。
引用:国税庁「法定調書の種類」
また、マイナンバー制度の導入により、法定調書類には受給者の個人番号(マイナンバー)が記載されるようになり、個人ごとの収入把握が一層正確になりました。これにより、複数の支払元からの収入を合算することで、不整合を検出しやすくなっています。
不自然な所得の増減や法定調書との不一致があると、税務署はその事実をトリガーにして任意の税務調査(あるいは必要に応じたより踏み込んだ調査)を実施します。税務調査自体は申告納税制度の健全性を保つための手続きであり、無申告や申告漏れが見つかれば追徴課税や各種の加算税につながる可能性が高いため注意が必要です。
無申告を放置すると税務署から重いペナルティを受ける
無申告や納付遅延を放置すると、時間の経過とともに延滞税などの負担が雪だるま式に増え、最終的な支払総額が大きく膨らみます。また、納税証明書の提出を求められる場面(融資や賃貸契約など)で不利に働いたり、法定調書との不一致をきっかけに税務調査・追徴課税の対象となる可能性も高まるなど、重いペナルティを受けることになります。
具体的なペナルティとしては以下のとおりです。
それぞれ順に解説いたします。
ローンや賃貸契約の審査で信用が下がる
無申告のままだと、金融機関や不動産会社が求める「収入の裏付け」を提示できず、審査で不利になります。
事業者やフリーランスの審査では、直近1〜2年分の「確定申告書控え」や「青色申告決算書/収支内訳書」、場合によっては「納税証明書」や「所得(課税)証明書の提出」を求められるのが一般的です。無申告だとこれらが出せないため、以下のような不利益を被ります。
- 申込自体が受け付けられない
 - 審査見送りになる
 - 借入可能額が想定より下がる
 - 金利や条件が悪化する
 - 連帯保証人や追加担保を求められる など
 
また、税金の滞納があると督促や差押えによって口座そのものを差し押さえられる可能性があり、金融機関側の返済能力の評価にもマイナスに働きます。賃貸契約においても、会社員は源泉徴収票、個人事業主は確定申告書控えの提出が定番で、無申告だと「収入の継続性・適法性」を示せず、入居審査の否決や保証会社での否認につながることもあるのです。要するに、無申告は「税務リスク」だけでなく「信用力の低下=調達・居住コストの上昇」という形でも跳ね返ってくるため、早期の申告・整備が不可欠です。
延滞税が増えて支払総額が増える
本税を納付すべき期限を過ぎると、翌日から納付日まで「延滞税」が日割りで加算されます。
納付が定められた期限に遅れますと、法定納期限(国税に関する法律の規定により国税を納付すべき期限をいい、原則として法定申告期限と同一の日となります。)の翌日から完納する日までの延滞税を併せて納付する必要があります。
引用:国税庁「延滞税の計算方法」
利率は法令と告示で毎年見直され、一定の期間を境に変わるため注意が必要です。2025年(令和7年)の延滞税は「2か月以内=年2.4%」「2か月超=年8.7%」が適用されます。
延滞税を増やさないためにやるべきことはシンプルです。金額の確定が済んでいるなら、まず本税と延滞税をできるだけ早く納付すること。金額が未確定でも、放置せず早期に申告に進むこと。これだけで日割り分の増加を止めることができます。
税務署からの調査や追徴課税の対象になる
無申告を放置すると、法定調書やマイナンバーの情報と突き合わせた照合で簡単に不一致が見つかるため注意が必要です。
また、疑義が生じると、質問検査権に基づく照会や任意調査が行われ、必要に応じて実地調査にまで発展します。調査では取引先への照会や銀行口座の入出金、カード利用履歴、請求書や領収書などが確認されることになるでしょう。
その結果、無申告や申告漏れが判明すると、もともとの税額に上乗せして加算税と延滞税が課されます。収入を隠したと判断されれば、より重い加算税が適用されてしまうのです。調査後は更正や決定が行われ、納付すべき税額と加算税、延滞税が正式に通知されます。
税務署からの調査対応で意識したいポイントは以下のとおりです。
- 連絡が来たら放置せず、期限内に回答する
 - 帳簿や領収書、通帳、契約書などの資料をそろえる
 - 取引の実態を説明できるよう時系列で整理する
 - 過去分の自主申告が可能なら速やかに行う
 - 自発的な是正はペナルティ軽減につながりやすい
 - 判断に迷う論点は税理士に相談し、主張と資料の整合を取る
 
早めの対応ほど負担は小さくなります。通知を受けた段階で、資料の整備と税理士への相談を同時に進めることを心がけましょう。
無申告が発覚したら早めに税務署へ相談する
無申告に気づいた時点で手を打てば、加算税の軽減や延滞税の増加抑制など、負担を小さくできる可能性があります。重要なのは放置しないことです。状況を整理して自主的に申告へ進み、支払いが難しい場合は分割納付の相談を行いましょう。
何から手を付けていいのかわからない場合は、税理士のサポートを得ることで必要書類の整備や論点整理がスムーズに進むでしょう。
実務上の具体的な対応の流れは、以下のとおりになります。
それぞれ順に解説いたします。
過去分を自主的に申告してペナルティを軽減する
無申告に気づいたら、まずは自分から申告へ動くことが大切です。税務署からの指摘や調査より先に期限後申告を行えば、無申告加算税の軽減が見込め、延滞税の増加もそこで止められます。迷ったまま時間だけが過ぎると、負担は着実に膨らんでしまうのです。
実際の進め方は、直近の年度から順に資料をそろえ、帳簿を復元、年ごとに申告書を提出する、というシンプルな流れです。売上は通帳や入金明細から拾い、請求書や領収書で経費の裏づけを取るようにしてください。支払調書や源泉徴収票がある場合は、数字が一致するかを必ず確認してください。数字と証憑の整合が取れていれば、書類提出後の照会もスムーズに進むでしょう。
なお、納付は早いほど有利です。本税の納付が済めば、その時点で延滞税のカウントが止まります。自力での帳簿の復元が難しい場合は、資料の束ね方だけでも税理士に助けを求めると、短期間で形にできるのでおすすめです。
期限後申告・修正申告・更正の請求の違いを理解して行う
無申告や誤りに気づいたときは、状況に合った手続きで正しくやり直すことが大切です。
下の比較で全体像をつかみ、当てはまる手続きを選びましょう。
| 手続き | 使う場面 | 期限 | 主な効果 | 留意点 | 
|---|---|---|---|---|
| 期限後申告 | 期限までに申告していないときに、後から初めて申告する | できるだけ早く申告 | 無申告の状態を解消 延滞税の増加を止められる  | 自主的に早く出すほど軽減余地が生まれる | 
| 修正申告 | すでに提出した申告に誤りがあり、税額が増えるとき自ら申告する | なるべく早く申告 | 誤りを自主是正できる 延滞税の増加を止められる  | 税務署の指摘前に自主修正すると軽く済みやすい | 
| 更正の請求 | すでに提出した申告で税額が多すぎたなど、減らしたいときに請求 | 申告期限から5年以内 | 還付や減額の可能性がある | 請求には根拠資料が必要。期限を過ぎると原則不可 | 
まずは自分のケースが未申告か、申告済みの誤りかを切り分けます。未申告なら期限後申告で早めに提出し、延滞税の増加を止めることが先決。申告済みの誤りなら、税額が増える場合は修正申告で自主是正、税額が減る場合は更正の請求で還付を求めることが可能です。
払えない場合は税務署に相談して猶予制度を申請する
一度に納付が難しいときは、所轄の税務署に申請して「猶予制度」を使う選択肢があります。許可を受けると、原則1年以内の期間に分割して納められ、延滞税が免除または軽減されます。対象は所得税や消費税など多くの国税で、印紙税など一部は除外です。ただし、すでに納めた税金をいったん返して猶予に切り替えることはできません。
猶予制度には大きく2つあります。ひとつは「換価の猶予」で、一度に納付すると事業継続や生活維持が困難となるおそれがある場合に認められます。納期限から6か月以内の申請が必要で、誠実な納税意思があること、他に滞納がないことなどが要件です。もうひとつは「納税の猶予」で、災害や盗難、病気、休廃業、著しい損失などにより、一度に納付できない場合に適用されます。いずれも原則として担保が求められますが、以下の要件を満たす場合は不要とされます。
次のいずれかに該当する場合には、担保を提供する必要はありません(国税通則法 46 条5項、国
税徴収法 152 条2項、3項)。
・ 猶予を受ける金額が 100 万円以下である場合
・ 猶予を受ける期間が3か月以内である場合
・ 提供することができる担保がない場合引用:国税庁「国税の納税の猶予制度FAQ」
なお、申請は資金繰り表や通帳の写し、請求書控えなど、支払い能力や必要資金を示す資料を備えて行います。最初の猶予期間内に払い切れない場合は、状況に応じて延長の検討がされることもあるのでご安心ください。
すでに滞納がある、あるいは申請期限を過ぎた場合でも、事情に応じて職権での猶予が検討される余地があります。迷ったら早めに所轄の税務署へ連絡し、初回にいくら、毎月いくらまでなら納付できるのかを具体的に伝えて相談しましょう。
税理士に相談して無申告から立て直す方法を整える
無申告を解消して再発を防ぐには、現状の把握から申告、納付、体制づくりまでを一気通貫で進めることが大切です。どうしても自分で進めるのが難しい場合は、税理士に依頼することで次のようなメリットを受けることができます。
事実関係を早急に整理
税理士であれば、通帳や明細、請求書を基に収入と経費を素早く突合し、年度ごとの数字を確定してくれます。複数年の同時申告や、消費税など他税目の影響も、横断して整えてもらうことができます。
最適な手続き選択とペナルティの最小化
期限後申告か修正申告か、更正の請求かを切り分け、根拠資料をそろえて提出してもらうことができます。自主是正のタイミングや説明書の書き方まで設計し、加算税や延滞税の負担が大きくならないように進めてもらえるので安心です。
猶予制度や納付計画の立案
資金繰り表を作成し、初回納付額と毎月の納付額を数値で提示できる形にしてもらうことができます。猶予制度の申請書類や担保の要否の判断、期日の管理まで一体で支援してもらえるほか、具体的な納付計画を立案してもらうことも可能です。
税務調査への備え
取引の流れと証憑の対応関係を整理し、質疑に即応できる資料ファイルなどを作成してもらえます。論点が見込まれる箇所は事前に説明方針を定め、不要な反復照会を避けるだけでなく、必要に応じて税務調査に立ち会ってもらうことも可能です。
再発防止の仕組みづくり
今後、同じような無申告状態にならないために、記帳ルール、証憑保存、月次の締め日、残高確認の手順を決め、会計ソフトの科目設定や自動連携も整備してもらえます。具体的な年末から申告までのスケジュール表を作成し、漏れが出ない運用に変更可能です。
デジタル手続きの一本化
電子申告やダイレクト納付の初期設定、納税証明書の取得、控えの保管までの対応を一本化することで、以後の手間とミスを減らせる仕組みづくりをサポートしてもらえます。
とはいえ、税理士に依頼するとなれば、どうしても費用がかかってしまいます。しかし、数字の確定が遅れて延滞税が増えるコストや、誤った対応で加算税が重くなるリスクを考えると、早い段階で税理士に任せる方が結果的に安く済むことが多いのも事実です。まずは資料一式を集め、どの年から、どの税目から出すかの工程表を作るところからはじめてみるのがおすすめです。
日頃の管理と早めの準備で無申告を防げる
無申告の多くは、締切直前に帳簿が未整理のまま時間切れを迎えることが原因です。日々の記録を溜め込まないこと、月ごとに数字を締めること、申告期前に必要書類と提出方法を確定しておくこと。たったこれだけで作業は軽くなり、期限が過ぎるリスクも下がります。
具体的には、通帳とカード明細の突合を毎月行い、領収書や請求書は撮影またはデータ保存で即時に整理します。年明け以降に届く各種控除証明書や支払調書は到着順に保管場所を決めて集約し、決算月の前から申告に必要な書類のチェックリストを走らせておくと取りこぼしを防げます。e-Taxなどの提出環境は、利用者識別番号や電子証明書の有効期限を早めに確認し、テスト送信や納付手段の事前登録まで済ませておくと慌てる心配もなくなるでしょう。
また、資金面では、概算の税額を月次で試算して納税用の口座へ取り分ける運用が効果的です。売上の波がある業種でも、キャッシュの見通しが立てば、猶予制度の要否を早期に判断できます。日頃の小さな積み重ねが、期限直前の混乱や無申告を未然に防ぐ最善策です。
こうした観点からも、特に意識したいポイントを4つまとめてみました。
それぞれ順に解説いたします。
確定申告の期限と提出方法を早めに確認する
まずは、確定申告の期限を正確に把握します。個人の所得税は毎年2月中旬から3月中旬が提出期間です。土日や祝日に当たると締切がズレることがあるため、年明けすぐにその年の正確な日付を確認しておきましょう。消費税の申告が必要な個人事業主は、所得税とは期日が異なる場合があるため、こちらも併せて確認します。
提出方法は早めに決めて準備しておきます。紙での提出、郵送、電子申告の3つが基本です。電子申告を使うなら、利用者識別番号、マイナンバーカードまたはICカードリーダー、電子証明書の有効期限、事前の動作確認を前倒しで済ませておくと安心です。紙で提出する場合は、控え用セットと返信用封筒を早めに用意し、郵送なら消印日が期限内になるよう余裕を持って投函しましょう。
また、納付方法も同時に決めておくと直前の負担が減ります。ダイレクト納付や口座振替は手続きに日数を要するため注意してください。振替依頼書の提出期限を逃さないよう、申告準備と並行して手続きを進めておけば安全です。スマホ決済やインターネットバンキングを使う場合は、利用限度額の上限や手数料の有無を事前に確認しておくとよいでしょう。
これらを年初に決めてしまえば、残りは必要書類を集めて数字を確定するだけです。
帳簿付けや経費整理を継続的に行う
申告直前にまとめて記帳すると、漏れや重複が発生しやすくなります。毎月の締め日を決め、通帳とカード明細を照合し、残高を合わせるところまでを最低限のルーチンにしておけば安心です。領収書や請求書は到着した日に撮影またはスキャンして保管し、取引日と金額と取引先を記録にひも付けるクセをつけましょう。私用と事業用は口座とカードは分けるだけでも、仕訳の手間が半分になります。
また、科目のルールを先に決めると迷いが減ります。広告宣伝費と交際費の境目、備品と消耗品の判断、少額資産の扱いなど、よく出る論点はメモ化しておけば記帳のブレがなくなります。現金を使う場合は現金出納帳を日次で更新し、立替が発生したら月内で精算して未払や仮払を残さない運用にするのがおすすめです。
さらに、月次でやることは次の3つに絞ることで効率化を図ります。
- 入出金の記録をすべて登録し、銀行残高と一致させる
 - 領収書と請求書を番号で管理し、未回収と未払いをチェックする
 - 在庫や固定資産の増減をメモして、後日の棚卸と減価償却に備える
 
交通費や通信費のように回数が多い経費は、定額の登録や口座自動連携を使うと入力負担が激減します。データさえ月次で整っていれば、期末の集計は短時間で済み、無申告に至るリスクを大きく下げられるでしょう。
会計ソフトを活用して申告作業を効率化する
確定申告は、紙と手入力に頼るほど遅れてしまうものです。
たとえば、インボイスや消費税の集計は、発行と受領の双方をクラウドで管理すると取りこぼしが起きにくくなります。取引先ごとに登録番号を紐付け、課税区分や税率の自動判定を使うと、期末の消費税計算をスムーズに進められるようになります。適宜、プロジェクトや部門のタグを用意しておくと、粗利や費用の内訳が月次で見える化され、資金手当ての判断も早まるでしょう。
具体的な仕組み化のコツとしては、次の点を抑えておくとよいでしょう。
- 連携と自動化を最初に整える
 - 月次の締め手順を固定する
 - 期限前チェックを一枚で見える化する
 
電子申告まで一気通貫で対応できる会計ソフトなら、申告書の作成やe-Tax送信、納付手段の登録まで画面内で完結します。ユーザー権限を分けて、入力と承認を分離するとミスが減り、税理士との共同作業も進めやすくなります。最初の設定に少し時間をかけるだけで、以後の申告作業は驚くほど身軽になるので、まだ会計ソフトを活用できていないのであれば、積極的に導入を検討してみましょう。
請求書カード払いを活用して資金繰りを安定させる
仕入や外注費などの請求書をカードで支払えると、実際の資金流出を次回の引落日まで先送りできます。売上入金より支払いが先行しやすい業種でも、支払いサイトを実質的に延ばせるため、無理な借入に頼らず資金繰りを平準化できるでしょう。
実務で押さえておくべきコツとしては次のとおりです。
- 支払いサイクルを設計して引落日を最適化する
 - 仕訳と証憑を連携して手数料は別勘定で管理する
 - 手数料や値引きを比較し総額で有利な手段を選ぶ
 - 決済手段を分散し残高確認と資金移動を定例化する
 - リボや分割は避け一回払いを基本に総コストを管理する
 
カード非対応の請求書でも、決済代行サービスを介してカード払いに切り替えられる場合があります。手数料と資金繰り改善の効果を天秤にかけ、繁忙期や大型発注など資金需要が読める局面で重点的に使うと、資金繰りの安定につながるでしょう。
