銀行で創業融資を受けることは可能?税理士がポイントを解説
新しく事業を始める際、資金の確保は最も重要な課題の一つです。
自己資金だけで必要な費用を賄える場合もありますが、自己資金だけでは資金が足りず、融資を利用する起業家は多くいます。
そのような中で銀行からの創業融資は有力な手段となります。
しかし、「銀行で本当に融資を受けられるの?」と疑問に思う方も少なくありません。
銀行は公的機関とは異なる基準で融資を判断するため、特有のメリットとデメリットがあります。
本記事では銀行での創業融資の仕組みから成功のための準備、申請時のコツなどを解説します。
この記事をご参考にしていただき、銀行融資に関する理解を深め、資金調達への第一歩を自信を持って踏み出しましょう!
目次
- 創業融資とは何か
- 銀行で創業融資を受けることは可能?
- 銀行の創業融資のメリットとデメリット
- 銀行で融資を受けるためのポイント
- 日本政策金融公庫等と銀行融資の違い
- 融資を受けるための資料や準備とおおまかな流れ
- 融資を受けやすい銀行の見つけ方
- さいごに
1.創業融資とは何か
まず、創業融資とは何かについてお伝えします!
創業融資とは、新しく事業を始める人や事業を始めて間もない人が、事業に必要な資金を借りられる融資のことです。
創業時は資金が不足しがちで、信用力や実績がまだないため、銀行からの融資を受けるのが難しい場合があります。
そんな中、創業融資は事業を始めるための「スタート資金」を得る手段となります。
特に自己資金が十分でない場合や、初期投資が大きい事業を始める際に有効です。
計画的に活用することで、事業の立ち上げをスムーズに進めることができます。
主な創業融資の種類は以下の通りです。
①日本政策金融公庫の創業融資
政府系の金融機関である日本政策金融公庫が提供する融資です。
保証人や担保がなくても利用可能な場合が多く、「新規開業資金」という制度では、無担保で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)の融資が可能です。
②自治体の創業支援融資
地方自治体が提供する融資制度のことです。
信用保証協会付きで信用保証料の補助がある場合が多いです。
③民間金融機関の創業融資
銀行や信用金庫などが提供する創業融資です。
日本政策金融公庫や自治体の制度と併用できる場合があります。
民間金融機関とは、都市銀行・地方銀行・信託銀行・信用組合・信用金庫・保険会社・証券会社・ノンバンクなど、民間の資本で運営する金融機関のことです。
④クラウドファンディング型融資やベンチャーキャピタル
民間主導の新しい資金調達方法として注目されています。
本記事では、上記の銀行や信用金庫などが提供する創業融資について詳しく解説していきます!
2.銀行で創業融資を受けることは可能?
結論からお伝えすると…銀行から創業融資を受けることは「可能」です!
銀行は事業融資の一環として創業融資を提供しています。
しかしながら、実際には以下の理由からハードルが高いとされています。
信用実績の不足
銀行は審査の際、企業や個人の信用情報を重視します。
しかし、創業間もない事業者には過去の経営実績がないため、銀行側からは「リスクの高い借り手」と見なされがちです。
そのため、事業の将来性や自己資金の準備状況が特に重要な判断材料となります。
自己資金の要件が厳しい
銀行での融資審査では、自己資金の額が重要視されます。
一般的に、総資金計画の30%程度を自己資金として準備する必要があると言われています。
自己資金は、事業主の資金計画や経営の本気度を示す指標としても見られるため、十分な自己資金の蓄えがあることが求められます。
担保や保証人が必要
銀行は、融資に伴うリスクを軽減するために、担保や保証人を要求することが一般的です。
担保や保証人を用意できない場合、融資を受けるのが難しくなることがあります。
特に、個人保証を求められるケースでは、家族の同意や資産の提示が必要になる場合もあります。
さらに、上記に加えて重視されている以下のポイントも忘れてはなりません。
- 返済能力:収益計画が実現可能で、融資額を返済できるだけのキャッシュフローが見込めるか
- 信用力:申請者の過去の金融履歴や現在の信用情報
- 事業の可能性:計画されている事業が市場で成功する可能性や競争力の有無
また、銀行融資には主に「プロパー融資」と「信用保証付き融資」の2種類があります。
プロパー融資は、銀行が独自の判断でリスクを負いながら貸し出す融資のことです。
この融資には、信用保証協会や第三者の保証がつきません。
よって信用力が高く、銀行との信頼関係が構築されている場合に適しています。
一方、信用保証付き融資は、信用保証協会が借り手の返済を保証する形で行われる融資です。
銀行にとってはリスクが軽減されるため、貸し出しやすい仕組みとなっています。
よって、創業期や初めて融資を借りる際は、金融機関から信用保証付き融資を提案されることが多いです。
3.銀行の創業融資のメリットとデメリット
次に他の資金調達手段と比較したメリットとデメリットについてお伝えしていきます。
銀行融資のメリット
金利が低い
低金利でよく知られている日本政策金融公庫と比較しても、銀行の金利は低めに設定されていることが多いです。
特に長期返済を考える場合、低金利は事業運営の大きな助けとなります。
大規模な資金調達が可能
銀行は大口の融資に対応できるため、設備投資や規模の大きいプロジェクトの資金調達に適しています。
信用力の向上
銀行融資を受けることで、事業者としての信用が高まります。
これにより、将来的に他の金融機関からの追加融資を受けやすくなる場合があります。
銀行融資のデメリット
審査が厳しい
銀行の融資審査は細かく、時間もかかります。
事業計画や過去の資産状況などを詳細に提示する必要があります。
保証人や担保が必要
担保や保証人を用意できない場合、融資が難しくなる場合があります。
融資まで時間がかかる
銀行融資は融資が実行されるまでに2~3ヶ月程の期間を要することが多いです。
銀行融資を検討する際には、融資が必要になる時間から逆算して申し込みましょう。
上記のメリットとデメリットを他の融資と比較して、自分の事業に合うかどうかをしっかり検討しましょう。
4.銀行で融資を受けるためのポイント
銀行融資のハードルを乗り越えるためには、しっかりとした準備が必要です。
以下に具体的な準備のポイントをお伝えします。
事業計画書を充実させる
銀行は、融資審査の際に事業計画書を重視します。
売上予測や市場分析、資金の使い道を明確にし、説得力のある資料を作成しましょう。
また、リスク対策や事業の成長見込みについても具体的に記載することが重要です。
十分な自己資金を準備する
自己資金は、銀行側にとって事業主の本気度を示す重要な指標です。
自己資金の準備が不十分な場合、融資が難しくなる可能性があります。
特に、自己資金が全体の資金計画の2~3割以上あることが望ましいとされています。
銀行担当者との信頼関係を築く
融資担当者との関係を構築することは、融資をスムーズに進める上で欠かせません。
定期的に事業の進捗を報告し、信頼を得ることで、担当者が積極的にサポートしてくれる可能性が高まります。
担保や保証人の準備を整える
担保として利用できる資産や保証人を用意しておくことで、銀行からの信用を得やすくなります。
具体的な資産や保証人について事前に確認し、必要な手続きに備えましょう。
財務状況や信用情報を整理する
過去の借入状況やクレジットカードの利用履歴などの信用情報を整理しましょう。
これにより銀行側にリスクがないことをアピールすることができます。
これらのポイントは銀行から融資を受けるときだけでなく、日本政策金融公庫などの他の融資機関にも当てはまる重要な事前準備になりますので、しっかりと準備しておきましょう。
5.日本政策金融公庫等と銀行融資の違い
銀行融資が難しい場合、日本政策金融公庫などの機関を利用する選択肢があります。
日本政策金融公庫の創業融資は、以下の点で銀行融資と異なります。
審査基準が緩やか
日本政策金融公庫の融資は、事業の将来性を重視しており、過去の実績がなくても融資を受けやすいです。
無担保・無保証で利用可能
日本政策金融公庫の新規開業資金などは担保や保証人を不要としているため、創業者にとって利用しやすい環境が整っています。
金利の違い
金利面では日本政策金融公庫の融資の方が有利な場合も多いですが、銀行の融資と比較して条件次第で異なることもあります。
日本政策金融公庫と銀行のどちらから融資を受けた方がお得になるかは、状況や条件によって変わるため、どちらを選ぶべきかは一概には言えません。
場合によっては銀行からの信用保証付き融資の方が負担が抑えられる可能性もあります。
ご自身だけで判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談するか、各融資元にしっかり確認することが重要です。
6.融資を受けるための資料や準備とおおまかな流れ
銀行で創業融資を受ける際には、以下の書類や準備が必要となります。これらをしっかり整えておくことで、審査をスムーズに進めることが可能です。
必要な書類
(1)事業計画書
事業内容、目標、収益予測などを詳細に記載します。
市場調査や競合分析の結果を反映させると効果的です。
(2) 資金繰り表
資金の入出金の予定を月ごとに記載した表です。
最低でも1年間分の計画を用意しましょう。
(3)自己資金に関する証明
通帳のコピーや貯金残高証明書など、自己資金の存在を示すものが必要です。
自己資金は融資審査の重要なポイントです。
4) 過去の確定申告書や決算書(既に事業を行っている場合)
過去の収益状況を確認するために、2〜3年分の確定申告書や決算書が求められる場合があります。
(5) 身分証明書や住民票
申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)や住民票が必要です。
(6)借入金の明細書(既存の借入がある場合)
他行からの借入金額や返済状況を示す書類が求められることがあります。
事前準備のポイント
(1) 事業計画の練り直し
書類に記載する内容が現実的で説得力のあるものであるかを再確認しましょう。
具体的な数字や実現可能性を示すデータを盛り込むことが重要です。
(2) 自己資金の蓄積
銀行は自己資金を重視するため、最低でも融資希望額の2〜3割程度の自己資金を用意しておくと好印象です。
(3) 信用情報の確認
申請者の信用情報が審査に影響するため、クレジットカードやローンの返済状況を事前に確認しましょう。
(4) 必要書類の整理
必要書類を早めに準備し、不備がないようにしましょう。
追加書類が求められる場合に備え、柔軟に対応できる準備が重要です。
融資を受けるまでの流れ
銀行は民間の営利企業であるため、日本政策金融公庫などの公的融資とは異なる基準で審査を行います。
公的機関は起業支援を目的として柔軟な条件で融資を行う一方で、銀行は「貸し倒れリスクを最小限に抑えること」を重視しています。
そのため、創業時には十分な準備と信頼を築く必要があります。
銀行の融資プロセスは主に以下の流れで進みます。
⑴問い合わせと面談予約
まず、融資を検討している銀行に問い合わせをし、担当者との面談を設定します。
⑵必要書類の準備と提出
自己資金証明や事業計画書、納税証明書など、銀行が指定する書類を揃えて提出します。
⑶審査
提出書類をもとに、銀行が事業の収益性や返済能力、創業者の信用度を審査します。
⑷融資の決定と実行
審査に通過すれば、融資契約を締結し、資金が指定の口座に振り込まれます。
これらの必要書類や融資を受けるまでの流れや条件は各融資によって異なります。
よって必ず事前に融資元に確認しておきましょう。
そして、創業者が銀行融資を受けるためには、銀行側が納得できるような事業計画や信用力が求められることを理解しておきましょう。
しかし、このような資料を自分だけで準備しようとしたり、独自の判断でのみ行ってしまうと、提出資料にミスが発生し、それを修正するにも非常に多くの時間がかかってしまうことが多いです。
そこで、税理士や創業支援に強い専門家に相談することで、効率的に融資を受けることができます。
税理士などの専門家にサポートを依頼することで、プロの視点で事業計画書をブラッシュアップでき、審査基準に応じた適切な準備のサポートやアドバイスもしてくれます。
7.融資を受けやすい銀行の見つけ方
創業融資を受ける際、銀行選びは非常に重要です。
銀行ごとに審査基準や融資条件が異なるため、自分の事業に最適な銀行を選ぶことが融資成功のカギとなります。
そこで、以下では創業融資を受けやすい銀行を見つけるためのポイントを紹介します。
地域密着型の銀行を選ぶ
地方銀行や信用金庫は、地域活性化を目的に創業者支援に力を入れている場合が多いです。
地元の経済状況や業界事情に詳しいため、創業融資の相談がしやすく、親身なサポートを受けられる可能性が高いです。
創業支援に特化した制度があるか確認
一部の銀行では、創業者向けに特化した融資制度を提供しています。
「創業融資」「スタートアップ支援プログラム」などの名称で展開している場合が多く、金利優遇や審査基準の緩和が特徴です。
日本政策金融公庫との連携を確認
銀行が日本政策金融公庫と連携している場合、保証がつきやすく融資のハードルが下がることがあります。
日本政策金融公庫との協力実績がある銀行を選ぶと良いでしょう。
口コミや実績を調査
実際に融資を受けた経験者の口コミや、銀行の創業融資実績をリサーチしましょう。
インターネットや創業セミナーで情報を集めると効果的です。
税理士や専門家の紹介を活用
税理士や経営コンサルタントに相談することで、創業融資に強い銀行を紹介してもらえる場合があります。
これにより、適切な銀行とのつながりを得ることができます。
当所では創業融資のサポートに特化した「熊本創業融資相談室」を運営しております。
熊本創業融資相談室では、融資全般にお困りの方に向けて各種サポートをご用意しております。
創業融資を始め、銀行や信用金庫などから、多くの事業者の方々の融資獲得のサポートをさせていただきました。
もし融資についてお困りのことがありましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください!
8.さいごに
銀行での創業融資はハードルが高い一方で、成功すれば低金利や信用力向上といったメリットを得られます。
しかし、事業計画書の作成や自己資金の準備、銀行担当者との信頼関係構築など、事前準備が重要です。
また、銀行融資にこだわらず、日本政策金融公庫など他の資金調達手段も併せて検討することで、最適な選択肢を見つけることができます。
創業融資について悩んでいる方は、専門家や税理士に相談することもおすすめです。
資金調達のプロフェッショナルにアドバイスを求めることで、スムーズな融資獲得が期待できます。
ぜひ、自分に合った方法で資金調達を進め、夢の実現に向けて一歩を踏み出しましょう!