買掛金とは？仕訳や売掛金との違いをわかりやすく解説

売掛金があれば買掛金もあります。今回は買掛金について解説していきます。

「大将！今日の飲み代ツケといて！」昭和のドラマで見られるシーンですが、これもまた買掛金を示したものです。売掛金と同様に買掛金もその支払いサイト（支払いまでの期間）や支払いのタイミングが重要になります。

みなさまの立場で考えると、売掛金が期日までに回収できなくても、「我慢」して入金まで待つこともできますが、買掛金を期日までに支払わないと即刻「不渡り」になり、ペナルティを受けてしまいます。

自分のミスで済む売掛金と比べて、債務不履行など法的ペナルティを受ける可能性があるのが買掛金です。売上を回収できないだけの売掛金と比べると、即刻市場から退場もあり得る買掛金を安易に考えないでください。

それでは買掛金について解説していきます。

買掛金とは後払いで発生する支払い義務のある負債

買掛金とは、事業者が相手先から商品や原材料などを仕入れた際に、代金の支払いを後日に行う約束をした場合に発生する「支払い義務のある負債」です。つまり、仕入先から商品を受け取った時点で、まだ代金を支払っていなくても買掛金として負債が計上されます。

支払い期日が到来すると、現金や預金で支払いを行い、その際に買掛金が減少します。買掛金は企業の短期的な資金繰りに関係する重要な項目であり、通常は1か月から2か月以内に支払われます。貸借対照表上では流動負債として扱われ、取引先との信頼関係や買掛金支払いスケジュールの管理が、企業の信用力維持や資金効率の向上に大きく関わります。

それぞれ順に解説します。

掛取引では仕入時に買掛金を計上し支払い時に処理する

掛取引とは、商品やサービスを受け取った時点では代金を支払わず、後日まとめて支払う取引方法です。企業間取引（事業者間取引）では一般的な方法であり、現金の流出を遅らせることで資金繰りを安定させる効果があります。掛取引による仕入の場合、商品を受け取った段階で代金の支払い義務が生じるため、会計上はその時点で「買掛金」を計上します。これにより、費用と負債が正しく認識されます。

そして、支払い期日になり実際に代金を振り込んだときに、買掛金を減らす仕訳処理を行います。たとえば、仕入時に「仕入／買掛金」、支払い時に「買掛金／現金（または預金）」と仕訳されます。こうした処理を行うことで、企業は取引の発生と支払いのタイミングを正確に把握でき、財務状況を適切に管理できます。掛取引は信用を前提とするため、取引先との信頼関係や支払い条件の遵守が非常に重要です。

買掛金は資金繰りや信用取引に関わる重要な項目

買掛金は、企業が仕入先から商品やサービスを受け取った際に、代金を後日支払う約束をすることで発生する負債です。この買掛金は、資金繰りや信用取引に深く関わる非常に重要な項目です。支払いを後日にすることで、企業は手元資金を一時的に温存でき、運転資金に余裕を持たせることが可能になります。

一方で、支払期日までに資金を確保できなければ信用を損ない、取引停止や市場からの退場などのリスクを招く恐れがあります。そのため、買掛金の支払スケジュールを正確に把握し、資金繰り表で管理することが欠かせません。

また、買掛金は企業間の信用取引を支える仕組みでもあります。取引先との信頼関係が築かれていれば、掛取引によってスムーズに仕入ができ、資金効率も高まります。「大将、今の飲み代、ツケといて～！」と言うやり取りは、相互に信頼があるからできるのです。つまり、買掛金は単なる負債ではなく、資金運用の柔軟性と事業者間の信用を維持するための重要な経営要素と言えます。

買掛金は支払う側で売掛金は代金を受け取る側の取引

買掛金と売掛金は、企業間取引における表裏一体の関係にあります。買掛金は「支払う側」が負担する負債であり、売掛金は「代金を受け取る側」にとっての資産です。たとえば、A社がB社から商品を掛取引で仕入れた場合、A社は代金を後日支払う義務があるため「買掛金」を計上します。一方、B社はA社に対して代金を請求する権利を持つため「売掛金」として処理します。

つまり、同じ取引でも立場によって会計上の扱いが異なります。買掛金は流動負債、売掛金は流動資産として貸借対照表に記載され、いずれも企業の資金繰りや信用取引の基礎となる項目です。買掛金の支払いを滞らせれば信用低下につながり、逆に売掛金の回収が遅れると資金繰り（キャッシュフロー）が悪化する恐れがあります。したがって、両者の管理は経営の安定に直結し、信頼に基づいたコミュニケーションによって健全な取引関係を維持することが重要です。

会計処理は売り手と買い手で仕訳内容が反対になる

会計処理において、売主と買主では同じ取引でも仕訳内容が反対になります。たとえば、掛取引で商品を仕入れた場合、買主は「仕入」勘定を借方に計上し、支払義務として「買掛金」を貸方に計上します。一方、売主は同じ取引に対して「売掛金」を借方に計上し、収益として「売上」を貸方に計上します。

このように、取引の立場によって借方・貸方の内容が逆になるのは、会計上の資産・負債・収益・費用などの違いによるものです。買主は商品やサービスを受け取ったことで資産や費用が増加し、支払い義務が発生します。一方、売主は商品やサービスを提供することで収益が増加し、同時に代金を受け取る権利が発生するため、売掛金として計上されます。

この仕組みにより、企業間での取引が正確に反映され、双方の財務状況が明確に管理されるのです。結果として、同じ取引でも売主と買主の仕訳は反対の形となり、帳簿上の資産・負債・収益・費用の動きを適切に表せます。

取引の立場を理解すれば買掛金と売掛金を区別できる

買掛金と売掛金は、取引の立場を理解することで区別が容易になります。買掛金は、商品やサービスを仕入れた側、つまり代金を支払う義務がある側に発生する負債です。掛取引で仕入れを行った際、まだ支払いが完了していない場合に「買掛金」として計上されます。一方、売掛金は、商品やサービスを提供した側、つまり代金を受け取る権利がある側に発生する資産です。

売上を立てたものの、まだ代金を回収していない場合に「売掛金」として帳簿に記録されます。このように、取引の立場が「支払う側か受け取る側か」によって、同じ取引でも会計上の勘定科目が異なります。仕訳では、買主は借方に仕入、貸方に買掛金を計上し、売主は借方に売掛金、貸方に売上を計上します。取引の立場を正しく理解することで、買掛金と売掛金を混同せず、帳簿上で正確に処理できるのです。

買掛金と未払金・未払費用の勘定科目上の違い

ここでは買掛金と未払金・未払費用の勘定科目上の違いについて解説します。買掛金と未払金・未払費用は、いずれもまだ現金を支払っていない支払義務を表す負債勘定ですが、性質や取引相手によって区別されます。

買掛金は、商品や製品の仕入れに伴う支払い義務に使われ、通常は取引先との継続的な掛取引（営業活動）で発生します。一方、未払金は、商品以外の物品やサービスの購入など、主に単発の支払い義務を記録する勘定です。

また、未払費用は、給与や利息、光熱費など、サービス提供後に発生した費用で、まだ支払っていないものを計上する際に用いられます。つまり、買掛金はほぼ仕入に限定され、未払金・未払費用はその他の支出に対応する点で区別されます。

それぞれ順に解説します。

未払金は仕入以外の支払いに使われる勘定科目

未払金は、仕入以外の支払いに使われる負債勘定で、商品や製品の仕入れ以外の取引によって発生する支払い義務を管理するために用いられます。本来の継続的な営業取引ではなく、単発的な取引から発生した債務を対象とする勘定科目です。

オフィス用品の購入、外注費やコンサルティング費用、設備の購入代金など、特定の取引先に対してまだ支払いを済ませていない金額を「未払金」として計上します。これに対して、買掛金は主に商品や製品の仕入れに伴う掛取引で使用されるため、用途が明確に区別されます。

また、未払金は発生原因が多様で、単発の取引であることが多く、取引先ごとに整理して管理することが重要です。会計上、未払金を正しく計上することで、支払い義務の漏れを防ぎ、財務状況を正確に把握できます。未払金の性質を理解して管理すれば、仕入れ以外の支払いを適切に記録し、経営判断や資金繰りの計画にも役立てることが可能です。このように、未払金は仕入以外の支払いを明確に区別して管理するための重要な勘定科目です。

未払費用はサービス提供後に発生する費用を指す

未払費用は、すでにサービスや役務の提供を受けたにもかかわらず、まだ支払いが済んでいない費用を計上するための負債勘定です。例として、月末時点で使用した水道光熱費や通信費、レンタル代など、期間内に発生した費用が対象となります。会計上は、費用が発生した時点で記録し、実際の支払いは後日行われるため、貸借対照表上では「未払費用」として負債に計上されます。

これにより、発生主義に基づいた正確な損益計算が可能となり、期間ごとの経営状況を正しく反映できます。未払費用は、仕入や購入に伴う買掛金や未払金とは異なり、費用の発生自体に着目した勘定である点が特徴です。管理を適切に行うことで、支払いの漏れや資金繰りの混乱を防ぎ、財務状況の透明性を確保できます。サービス提供後に発生する費用を把握し、未払費用として正確に処理することは、企業の会計の信頼性を高める重要な要素です。

取引内容に応じて買掛金と未払金を正しく使い分ける

買掛金と未払金は、いずれも支払義務を表す負債勘定ですが、取引内容によって使い分けることが重要です。買掛金は、主に商品や製品の仕入れに伴う掛取引で発生する支払い義務に用いられます。仕入れ先から商品を購入し、代金を後日支払う場合に計上され、継続的な取引関係に基づく債務管理に適しています。

一方、未払金は、仕入以外の支払いに対して使われ、オフィス用品や外注費、設備購入など、特定の取引先に対して主に単発で発生した支払い義務を記録します。単発の取引であることが多く、取引ごとに整理して管理する必要があります。

取引の性質を正しく理解し、買掛金と未払金を適切に区別して仕訳することで、帳簿の正確性が高まり、資金繰りや債務管理の計画も立てやすくなります。

誤った勘定科目の使用は、財務状況の誤解や経営判断の誤りにつながる可能性があるため、取引内容に応じた適切な処理が求められます。このように、買掛金と未払金を正確に使い分けることは、企業の会計管理の基本かつ重要なポイントです。

買掛金の仕訳方法と支払処理の流れを具体的に解説

買掛金について理解していただいたので、実際に買掛金を会計時どのように処理していくのか、解説していきます。仕訳方法や支払処理の流れについて、しっかり理解しておいてください。

それぞれ順に解説します。

仕入時に買掛金を計上し支払い時に帳簿から消す

企業が商品や原材料を仕入れる際、現金で即時に支払う場合もありますが、多くは後払いで取引が行われます。このような後払いの取引を「掛取引」と呼び、仕入時点ではまだ代金を支払っていないため、負債として「買掛金」を計上します。

つまり、仕入先に対して将来支払う義務がある金額を一時的に記録するわけです。その後、支払期日が到来し、実際に現金や預金などで代金を支払った時点で、帳簿上の買掛金は消去（消込）されます。この流れにより、仕入取引に関する債務と支払いが正確に管理され、財務状況を正しく把握できるようになります。買掛金の処理は、企業の資金繰りや信用管理の基本となる重要な会計手続きです。

買掛金の仕訳については比較的簡単です。

A社がB社から仕入をしていて、そのための買掛金が100万円あると仮定します。

末日締め翌月20日払いの契約（買掛金支払いサイト20日）と仮定します。

（1）10月15日に100万円仕入れた

借方	貸方
仕入　1,000,000円	買掛金　1,000,000円

10月末日締めなので、10月31日の日付でB社からA社に請求書が来ます。仕入時に買掛金が発生するのでこのような仕訳になります。

（2）11月20日に買掛金100万円を支払った

借方	貸方
買掛金　1,000,000円	現金（or銀行口座）　1,000,000円

この仕訳で買掛先はなくなります。しかし、11月20日に現預金がない場合、別の方法で資金を買掛先の口座に入金しなければなりません。融資では間に合わず、ビジネスローンはデメリットが多いのでファクタリングを利用することになるかもしれません。

返品や値引き時は調整仕訳で金額を正確に修正する

仕入れた商品に不良や誤納品があった場合、返品や値引きといった取引が発生します。これらの取引が行われると、当初計上した仕入金額や買掛金の金額が実際の取引内容と一致しなくなります。そのため、会計上は「仕入戻し」や「仕入値引」といった勘定科目を用いて調整仕訳を行い、金額を正確に修正します。単に「仕入」を用いて消込することもあり、税理士によって指示する内容が分かれます。

仕入れた商品の一部を返品した場合は、仕入額と買掛金を減額する仕訳を記録します。値引きの場合も同様に、仕入額を減らす形で処理を行います。こうした調整を行うことで、帳簿上の仕入高や負債残高が実際の取引内容と一致し、正確な財務状況を反映できます。返品や値引き処理は、信頼性の高い会計管理を維持するうえで欠かせない手続きです。

これをもとに、返品や値引きが発生した場合は、元の仕訳を調整して金額を正確に修正します。

返品の仕訳

仕入れた商品を返品する場合、当初計上した仕入金額と買掛金を減額する仕訳を行います。たとえば、仕入時に「仕入／買掛金」と記録していた場合、返品が発生した時点で「買掛金／仕入」と逆の仕訳を切ります。

これにより、返品分の仕入額と支払義務が同時に減少し、帳簿上の金額が正しい状態に修正されます。実際の支払い前に返品した場合は、支払う買掛金が減るため資金繰りにも影響します。一方、すでに支払い済みであれば、返金や相殺などの処理を行い、取引先との精算を正確に行います。返品仕訳は仕入取引の実態を正しく反映させる重要な会計処理です。

具体的な仕訳を見てみましょう。

＜返品の仕訳＞

①-1　10万円の掛取引（買掛金）で仕入れた。

借方	貸方
仕入　100,000円	買掛金　100,000円

①-2　1万円分返品した。

借方	貸方
買掛金　10,000円	仕入（仕入戻し）　10,000円

①-3　支払期日が来たので買掛金を支払った

借方	貸方
買掛金　90,000円	現金（or銀行口座）　90,000円

仕訳の勘定科目ですが、「仕入戻し」を使う場合も単に「仕入」を使う場合もあるようです。顧問税理士の考えもあるので、ぜひ当該事態になった場合には聞いておいてください。単に「仕入」の方が、当該「仕入」勘定の消込はうまくいきそうです。

値引きの仕訳

値引きとは、支払期日より前に代金を支払った場合に、金額を減らすことを指します。「販売したのが1級品ではなく、2級品だったので値引きします」みたいなイメージです。

売上として売掛金を計上している場合、取引先が期日前に支払う際に金額を減額する場合は、値引きに関する仕訳を行う必要があります。同様に、仕入として買掛金を計上している場合でも、期日前に支払った際に値引きを受けた場合には、その差額を反映する仕訳を帳簿に記録しなければなりません。10万円のものを掛取引で仕入れたと仮定します。

＜値引きの仕訳＞

②-1　10万円の掛取引（買掛金）で仕入れた。

借方	貸方
仕入　100,000円	買掛金　100,000円

②-2　5,000円値引きしてもらった。

借方	貸方
買掛金　5,000円	仕入（値引）　5,000円

①-3　支払期日が来たので買掛金を支払った

借方	貸方
買掛金　95,000円	現金（or銀行口座）　95,000円

消込や残高確認で帳簿の整合性を維持する

帳簿の整合性を維持するためには、消込作業や残高確認が不可欠です。消込とは、仕入や売上に伴って計上した債権・債務と、実際の入出金を照合し、相殺する作業です。買掛金の場合、請求書に基づき計上した金額と、実際に支払った金額を照合し、支払済みの取引を消し込むことで、帳簿上の残高が正確になります。

同様に売掛金でも、入金確認後に消込を行い、未回収額を明確に把握します。また、定期的な残高確認では、取引先ごとの買掛金・売掛金明細と帳簿の残高を照合し、誤計上や未処理を早期に発見します。これにより、資金繰りの把握や決算処理の正確性が向上します。

返品や値引きがあった場合も調整仕訳を行い、消込と残高確認を組み合わせることで、帳簿と実際の取引の整合性を保ち、企業の財務情報の信頼性を高められます。

買掛金管理を効率化する方法と実務で使えるコツ

買掛金は事業取引をスムーズにするものですが、支払いサイトを間違えると、支払日に現金がない状況にも陥ってしまいます。複数の取引先と買掛契約していることがあれば、それぞれの支払日をどうするかも重要なポイントになります。買掛金支払日がバラバラだと経営効率化とは程遠い状況になってしまいます。

ここでは買掛金管理を効率化するための方法や実務で使えるちょっとしたコツを紹介します。

支払予定表で資金繰りを可視化しトラブルを防ぐ

支払予定表を作成することで、資金繰りを可視化し、支払トラブルを未然に防げます。支払予定表とは、仕入先や外注先への支払い予定日と金額を一覧化した表で、買掛金の管理に欠かせないツールです。これにより、いつどの取引先にいくら支払う必要があるかを一目で把握でき、資金不足による未払いリスクを事前に把握できます。

実務では、支払予定表に消込済みや未消込の買掛金も明記し、支払日ごとに必要な現金残高を確認します。また、返品や値引きなどの調整も随時反映させることで、帳簿上の残高と実際の支払額の差異を減らせます。さらに、支払予定表を使って支払サイクルの最適化や支払日の調整を行えば、無理のない資金運用が可能になります。定期的に確認・更新することで、突発的な資金不足や支払漏れを防ぎ、企業の財務管理と信用維持に役立ちます。

取引先ごとの支払期日を一覧で管理して漏れを防止

取引先ごとの支払期日を一覧で管理することは、買掛金管理において非常に有効です。支払期日を一覧表にまとめることで、どの取引先にいついくら支払う必要があるかを一目で把握でき、支払漏れや遅延を防止できます。特に掛取引が多い場合や複数の取引先と取引している場合、期日管理が曖昧だと未払いリスクが高まります。

実務では、取引先ごとに買掛金残高や支払サイト、優先度を記載した表を作成し、支払日ごとに現金の必要額を把握します。さらに、返品や値引きが発生した場合は調整仕訳で帳簿を修正し、一覧表にも反映させることで、常に正確な情報を維持できます。定期的に確認・更新を行うことで、突発的な資金不足や支払漏れを防ぎ、資金繰りの安定と取引先との信用維持に役立ちます。

会計ソフト連携で請求・支払い業務を自動化する

会計ソフトと連携することで、請求書発行や支払業務を自動化でき、買掛金管理の効率が大幅に向上します。具体的には、仕入先からの請求データを会計ソフトに取り込み、仕訳を自動作成することで、手入力によるミスを減らせます。また、支払期日や金額をソフト上で管理することで、支払予定表の作成や消込作業も自動化が可能です。

さらに、銀行口座（オンラインバンキング）と連携すれば、買掛金の支払処理や入金消込も効率化できます。返品や値引きが発生した場合も、調整仕訳をソフト上で入力するだけで自動的に会計帳簿に反映され、買掛金残高の正確性を維持できます。こうした自動化により、確認作業や手作業による負担が軽減され、資金繰りや決算処理の精度も向上します。会計ソフト連携を活用することで、人的ミスを減らし、支払い漏れのリスクを抑えつつ、効率的で信頼性の高い会計処理が可能になります。

買掛金の会計処理と税務上の注意点を確認する

買掛金は、商品やサービスを掛取引で仕入れた際に発生する支払い義務を管理する負債勘定で、仕訳は「仕入」勘定を借方、「買掛金」を貸方に計上します。支払時には「買掛金／現金預金」で負債を消し込み、返品や値引きがあった場合は調整仕訳で正確な金額に修正します。会計処理を正確に行うことで、帳簿上の残高と実際の支払義務の整合性が保たれます。

税務上の注意点としては、仕入れや外注費などの費用計上時期が課税所得に影響するため、発生主義に基づき適切な期間で計上することが重要です。また、未払金や未払費用との区別を明確にし、買掛金の残高を正確に管理することで、課税所得や消費税の申告における誤りを防げます。定期的な残高確認や消込作業を行い、帳簿と請求書・支払記録を照合することも税務リスクの低減につながります。

それぞれ順に解説します。

支払い遅延は債務不履行となるリスクがある

買掛金の支払いが遅延すると、債務不履行となるリスクがあります。債務不履行とは、契約で定められた期日までに支払いを行わないことで、法的な責任が生じる可能性がある状態を指します。特に掛取引では、取引先との信用が直接影響するため、支払遅延は信用低下や取引停止の原因になることがあります。支払期日を守らない場合、遅延損害金の請求や、最悪の場合は契約解除や訴訟に発展するリスクも考えられます。

手形の支払いが「不渡り」を起こし、不渡り2回になると「事実上倒産」となりますが、買掛金の支払い遅延も同じような厳しいペナルティを取引先から課される可能性はゼロではありません。

経営実務では、支払予定表を作成して取引先ごとの支払期日を把握し、資金繰りを事前に調整することが重要です。また、会計ソフトやシステムで支払管理を自動化し、消込や残高確認を行うことで、支払い漏れや遅延を防げます。さらに、返品や値引きが発生した場合は速やかに調整仕訳を行い、買掛金残高を正確に把握することも必要です。

万一支払が遅れる場合は、取引先に事前連絡を行い、支払計画の調整や期日の延長を相談することで、信用低下や法的リスクを最小限に抑えられます。こうした管理と対応を徹底することで、債務不履行によるトラブルを防ぎ、健全な取引関係と資金管理を維持することが可能です。

期末時点の未払いは正しく負債として計上する

期末時点で支払いが完了していない買掛金や未払費用は、正確に負債として計上することが重要です。会計上、発生主義に基づき、費用や仕入れが発生した時点で仕訳を行い、支払の有無に関わらず帳簿に記録します。期末までに仕入れた商品代金が未払いであれば、「仕入／買掛金」として負債に計上し、支払いが後日行われる際に「買掛金／現金預金」で消し込みます。これにより、財務諸表上の負債残高が実際の支払義務と一致し、企業の財務状況を正確に把握できます。

未払費用や未払金も同様に、給与や光熱費、利息などの費用が発生しているにもかかわらず未払いの場合、「未払費用／該当費用勘定」として負債に計上します。これにより、損益計算書上の費用が正しい期間に反映され、期末の利益計算が適正になります。

また、期末における買掛金や未払費用の残高を取引先明細と照合し、消込や調整仕訳を行うことで、誤計上や漏れを防ぎ、決算書の信頼性を高めます。期末時点で未払いの負債を正確に計上することは、資金繰り管理や税務申告においても重要なポイントです。

仕入割引や手形払い時の処理も忘れず確認する

買掛金の会計処理では、仕入割引や手形払いなど特殊な支払い条件も正確に反映することが重要です。仕入割引は、取引先が早期支払いなどの条件に応じて提供する値引きを受けた場合に適用されます。商品10万円の仕入れで1,000円の早期割引を受けた場合、仕訳は上記のような仕訳を行います。仕訳により、値引き分を差し引いた正確な買掛金残高が帳簿上に反映されます。仕入割引を適切に処理することで、実際の支払額と帳簿上の負債が一致し、資金繰りの管理にも役立ちます。

手形払いの場合は、支払期日まで現金が動かないため、「買掛金／支払手形」として記帳します。期日になったら「支払手形／現金預金」で決済を行い、負債を消し込みます。これにより、帳簿上で買掛金の残高と支払手形の状態を正確に把握できます。また、返品や値引きが発生した場合は調整仕訳を行い、買掛金残高を正確に管理することが求められます。

仕入割引や手形払いを含む全ての取引条件を正しく処理することで、帳簿の整合性が保たれ、決算書や資金繰り計画の精度が向上します。加えて、税務申告や財務分析においても誤りを防ぎ、みなさまの社会的信用が維持されます。